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ゴールドマン・サックス 世界最強の投資銀行

  • 2006/01/14(土) 13:09:30

リサ・エンドリック 著 /斉藤聖美 訳/ 早川書房



ゴールドマン・サックス

お勧め度・良 ☆☆☆★★
「読むと得することがある」レベル


概略



1869年のゴールドマン・サックスの創業から1999年の株式公開まで、実に130年に渡る歴史を書き綴った本です。ゴールドマン家とサックス家の営む、夢だけは大きいが小さな同族企業が、成功と失敗を積み重ねながら世界最大の投資銀行になっていく過程は実に興味深いものです。ゴールドマン・サックスに興味のある人、投資銀行に興味のある人、会社経営に興味のある人、ワクワクドキドキの物語が読みたい人にお薦めです。


チェックしたところ



・社員が仕事を楽しみ、上司を尊敬し、会社を愛してくれれば、これにまさるものはない。個人の成功が会社全体に成功をもたらすときに初めて組織が繁栄する。だが、会社は何を重要と考えているかを説教しようとすると、人々の目は眠気にどんよりとしてくる。そこで彼はメッセージを社員が無視できない方法で伝える。それがパートナーの選択基準というわけだ。「会社にとって役立つことをする人が報われる」というのがルービンとフリードマンのメッセージだった。(中略)この主観的な選択のプロセスで強調されるのは、チームワークである。

・レビーはシャインバーグにいろいろな手ほどきをしたが、もっとも重要な教訓はリスクについてだった。その取引でいくら儲けられるかを考えてはダメだ。マチガイを犯したらいくら失うかと考えるようにしろ、とレビーは愛弟子に教えた。


感想



この本のなかで多くの分量がゴールドマン・サックスの経営者たちの個性と、同社の企業文化に関する著述に割かれています。歴代経営者の個性が会社の行くべき方向を決め、同社の企業文化が他社を圧倒するエネルギーを生んだからです。

本書がゴールドマンサックス社が創業百年以上を経て、はじめて株式公開をするところで終わるのもそれらに大いに関係があります。株式公開によって同社の所有権は株主に移ってしまったからです。それ以前の所有者は、パートナーとよばれる人たちでした。同社は同族企業として始まり、世界的な大企業となってからもパートナー制をとっていました。株式公開は会社の資本を増強してくれるし、短期的には莫大な利益をもたらしてくれるけれど、ゴールドマン・サックスの最大の強みである企業文化を根底から変えてしまうのではないかと恐怖されていたのです。そのため同社は、株式公開を三度も検討して三度否決し、四度目にしてようやく実現しています。


パートナーとはゴールドマンサックス社でもっとも高い地位であり、会社の所有者を意味します。能力をみとめられ、社内でもっとも出世した社員は、パートナーになると同時に自社の所有者の1人になれるのです。彼らは会社の所有者となり、莫大な資産を手にするかわりに会社に関して無限責任を負います。パートナーは毎月莫大な給料をもらいますが、その大半は強制的に会社に再投資されます。彼らが自分の資産を会社の資本から引き出せるのはパートナーを引退して以降です。パートナーたちは自分の資産で会社を運営していることになるので、「長期的な欲望」に従って、自分たち自身のために、会社の長期的な利益のために邁進します。

パートナー制のメリットは経営陣が短期的な利益よりも長期的な利益を考えるようになること、優秀な社員たちを自社に引き止めておく求心力となること、身内的な企業文化を維持できることです。ゴールドマン・サックスのパートナーになることは桁外れの大金持ちになることだけでなく、最高の名誉と誇りを手にすることを意味していました。

このパートナー制度は非常に興味深い仕組みです。「いずれはパートナーに」という希望を社員に与えることで、同業他社に比べると決して高いとはいえない給料でも、離職率3%以下という偉大な効果をしめしました。パートナー制は会社の利益と個人の利益を完全に一つにするので、自己愛がそのまま愛社精神になるのです。それは当然、仕事にもいい効果をあたえます。目先の好業績に振り回されるのではなく、顧客重視という社の理念を自分のものとして働くのです。社の理念にそって成果をあげた者だけがパートナーになれるのですから。

この制度は「個人の成功が会社全体に成功をもたらすときに初めて組織が繁栄する。」という考えに立脚しています。この考え方はあらゆる組織に応用できるものです。もしこれを国家に応用できるならば、その国は最高の繁栄と幸福を手に出来るでしょう。その手段は思いつきませんが。会社組織についてはパートナー制をそのまま使うのが有効でしょう。非営利団体にもパートナー制度を導入すると面白いと思います。非営利団体は営利を目的とはしませんが、目的のためには営利をあげる組織です。団体の理念を最も実践し、営利をあげて目的をはたせば団体の所有者になれる。そうすれば大きな名誉とともに大きな資産を得られるということになれば、非営利団体の目的達成と人材供給はずっと効率化するのではないでしょうか。

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